コーヒーと音楽と本・・・それは日常になくてはならない活力源.中学生の頃,星新一,都築道夫,阿刀田高氏らのSS作品に出会ってから本のとりこになってしまい,エンジニアになった今では主食のごとく,食べつくしています.これまでに記憶に残っている本を理系作家と文系作家および女性作家とに分けてご紹介します.
★理系作家
「すべてがFになる」 :森博嗣
愛知県生まれ.某N大学工学部准教授 (建築工学),粘塑性流体の数値解析手法の研究してる.

■メフィスト賞受賞作品.「理系ミステリー作家」と言えば,森博嗣氏.そして,「すべてがFになる」は彼のデビュー作.理系のカッコよさや天才っぷり,魅力的なセリフをわかりやすく活字へと料理してくれる作家です!私は初期の作品が好みですが,そのノリで言えば,理系的ウンチクテンコ盛の「封印再度」なんかのセットで,おいしくいただけると思います.
「パラレルワールド・ラブストーリー」 :東野圭吾
大阪生まれ.大阪府立大学電気工学科卒業,元生産技術エンジニアとして企業に勤務

■青春ミステリーでスタートを切り,社会派サスペンス,恋愛小説,メタフィクション,ユーモア小説と,幅広い作風におなかいっぱい.「パラレルワールドラブストリー」は,親友の彼女を好きになってしまった結果・・・バーチャルリアル工学の世界と絡めた作品.他に「天空の蜂」「虹を操る少年」はエンジニアにオススメ.  「トキオ」や「さまよう刃」はなかでも好きな作品です.
「デカルトの密室」 :瀬名 秀明
静岡県生まれ.東北大学大学院薬学研究科博士課程修了,同大学で機械系の特任教授を努める.

■「パラサイト・イブ」で日本ホラー小説大賞を受賞.専門ではないがロボットや科学にに関する作品が多い.そのきっかけは,ある出版社から「ロボット研究者を訪ね歩く記事を書いてほしい」と頼まれて,専攻が違うと躊躇していたら「同じ理系だから大丈夫だよ.」と言われて・・.この作品は,彼の意気込みを感じられる未来へ問いかけたロボット(知能に関する)の科学ミステリー.
「99%の誘拐」 :岡嶋二人
井上泉(多摩日美術学園映画科中退)と徳山諄一氏(法政大学経済学部中退)によるコンビ

■非常にテンポのよい作品ゆえに,そっこーでかっくらえます.
スピード感あふれる身代金誘拐劇で,メカチックな仕掛けやトリックも展開さています.
「人さらいの岡嶋」と呼ばれるほど,彼らの誘拐テーマの作品らは高い評価をうけてるらしいです.

理系作家ではありませんが,思わず理系だと思わせてしまうほど理系っぽい発想のお食事です.
「パワー・オフ」 :井上夢人
本名は井上泉↑(岡島二人の片方)

■「日本一パソコンに詳しいミステリ作家」と呼ばれている.
「パワー・オフ」は,そんな彼の得意技を思い存分に発揮した作品です.
「おきのどくさまウィスル」というウィルスとワクチンを抱き合わせで開発した主人公が,ウィルスだけを先にばらまいて儲けようとした犯罪がテーマ.
「ハサミ男」 :殊能将之
福井県生まれ.名古屋大学理学部中退後,編集プロダクションに勤務し退職.


■女子高生の喉にハサミを差し込み殺害する犯人をマスコミが「ハサミ男」と命名.
オカルト好きは楽しめる一品かもしれません.
この作品をきっかけに,「〜男」とタイトルがつく本をついついいただくことになってしまいました.
自分がオカルトかも.
「M8(エムエイト)」 :高嶋哲夫
岡山県生まれ.慶応大工学部に入学。たまたま見学した日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)の核融合研究に,修士課程を終え就職。

■この方の経歴ですが,世界最高レベルといわれた核融合実験装置の開発に携わる.道を究めようとアメリカへ留学,挫折,限界をしるぅ,研究者に見切りをつけるぅ,作家友人から刺激を受けるぅ,もの書きはじめるぅ,くえないから学習塾も経営するぅ,40であたるぅ,なにはともあれ,これだけで元気をもらえます.
「虚数の眼」 :湯川薫
東京生まれ.茗渓大学に非常勤講師として勤務しており、自然科学概論などを担当している.

■曾祖父と祖父は天才的な科学者で,本人もその血筋をひいて多くの科学書を出版している.
湯川幸四郎シリーズの「虚数の目」は,熊のぬいぐるみから子供が発見されるという奇怪な事件を得意の科学知識を駆使して展開する作品.
「量子」や「虚数」も自身の図解で料理してくれるから問題なし.後半の謎解きはうまみ抜群.
「バビロニア・ウェーブ」 :堀
兵庫県生まれ.大阪大学基礎工学部卒.繊維メーカー勤務の兼業作家さん

■銀河面を垂直に貫く,直系1200万キロ,全長5380光年のレーザー光束定在波「バビロニア・ウェーブ」.そこに反射鏡を45°角で差し込めばすごいエネルギーを入手できるという理論的にも重厚なハードSF.情報理論やエントロピーの収支を正面からSFとして料理してくれてる.質が高けりゃ,作品の量も少ない.まさに彼のこと.
「日本沈没」 :小松左京
大阪生まれ.町工場経営の父から生まれ,兄は京大の冶金工学を専攻し,小松氏に科学の知識を教えた.その後,京大文学部イタリア文学を専攻する.

■日本推理作家協会賞受賞作品.初刊は1973ですが,長期に渡るベストセラー小説です.ストリーはもちろんのこと,技術的,地球物理学的な裏づけも明確で心に残る作品です.日本SF界を代表するSF作家で,若かりし頃,星新一や筒井康隆氏らの作品と共にたのしくいただきました.
★文系作家
「テロリストのパラソル」 :藤原伊織
大阪生まれ.東京大学文学部フランス文学科卒業後,電通に勤務する.

■ハードボイルドの三ッ星作家.「テロパラ」は江戸川乱歩賞&直木賞のW受賞作品.
主人公の島村は40半ばでアル中だけど,紳士でケンカは強くて知性があって,合理的で,女にもてる.
まさに男性の理想像でしょうね.
物語の進行を素直においしくいただけます.「雪が降る」これもまたしぶい.しぶすぎる・・・・.
「天使のナイフ」 :薬丸岳
東京生まれ.駒沢大学高等学校卒業後,劇団の俳優を経て作家へ.

■江戸川乱歩賞受賞作品.「13階段」を読んだことがきかっけで書いたという選考の時点でブッチギリだった「天使のナイフ」.少年犯罪というデリケートな問題を独自の視点で徹底的に調査され,じっくり煮込まれた力作です.書き手に引き込まれるような文章タッチで,後半二転三転とドミノ倒しのような展開に大変おいしゅうございました.
「13階段」 :高野和明
東京生まれ.ロサンゼルス・シティ・カレッジ映画科中退.その後脚本家へ.

■江戸川乱歩賞受賞作品.刑務官が前科を背負った青年と一緒に死刑囚の冤罪を晴らすべく調査を始める.処刑までに残された時間はわずかしかない・・.といったハラドキの内容.タイトルの「13階段」は絞首台への代名詞であり,刑務官側の感情がよく描かれており,死刑制度について考えさせられる作品です.つきなみですが,おいしくいただけます.
「脳男」 :首藤瓜於
栃木県生まれ.上智大学法学部卒業.モダンアートのプロディースを行っている.


■江戸川乱歩賞受賞作品連続爆弾魔のアジトで見つかった「心を持たない男」の過去について,刑事と精神科女医が迫りまくる.爆弾魔−刑事−脳男の知恵比べがおいしい.
タイトルの「脳男」って何?どんな男?また「うりお」ってなんちゅう名前なんねん.とインパクトある不気味な表紙につられていただくとこになった一品です.
「七回死んだ男」 :西澤保彦
高知県生まれ.米国の私立エカード大学で創作法を専攻.高知大の助手や講師を勤めるからわら執筆.


■時間のループにとらわれ,同じ一日を9回繰り返すという特異体質の少年が祖父の死を食い止めようとするSF推理小説.見事に7回死んでいます.
タイムループ系の話だと,北村薫氏の「ターン」や筒井康隆氏の「時をかける少女」もありますが,状況設定での条件付けは,こちらの方が上手かもしれません.
「占星術殺人事件」 :島田荘司
広島県生まれ.武蔵野美術大学商業デザイン学科卒業.ダンプの運転手,ライター,ミュージシャンなどを経て作家へ.


■「金田一少年の事件簿」でこの「占星術−」が流用されるほど島田氏のトリックのスパイスは三ッ星.
「21世紀本格−書下ろしアンソロジー−」は,彼が理系作家に依頼してまとめた科学要素凝縮作品なので,いろいろな味が楽しめますよ.
「ルパンの消息」 :横山秀夫
東京生まれ.東京国際大学商学部卒業.上毛新聞社で12年の記者生活を送る.

■サントリーミステリー大賞佳作を受賞作品.時効直前の2つの事件,「ルパン作戦」と「三億円事件」が複雑に絡み合う重厚なサスペンス.
「半落ち」「出口のない海」や日航機墜落の事件を扱った「クライマーズ・ハイ」など,自らの体験で綴った横山ワールド作品もおいしいけど,処女作はかなり隠し味の利いたご馳走でございます.
「青の炎」 :貴志祐介
大阪生まれ.京都大学経済学部卒業.生命保険会社に勤務のかたわら執筆.

■ホラー作家です.でも,ホラーだけでは留まらない幅広い作風を見せてくれます.
「青の炎」は,母や妹に暴力を振るう義父殺害の完全犯罪を17歳の少年が計画するという
痛々しいテーマ.切ないよ.
「硝子のハンマー」「天使の囀り」にしても,とにかく,状況描写が細かくて,こわくて,うまい〜.
「新世界」 :柳 広司
三重県生まれ.神戸大学法学部卒業

■夏目漱石の「坊ちゃん」や進化論を唱えたダーウィン,トロイの遺跡を発掘したシュリーマンなど歴史上の偉人を殺人事件に採り上げた作風.知的好奇心をムズムズ刺激してくれます.
まずは,原爆・核兵器開発の苦悩を描いた「新世界」からいただいてみてはいかがでしょうか.
熱力学の魔術師フェルミもしっかり登場させてくれてます.
★女性作家
「塩狩峠」 :三浦綾子
北海道旭川市生まれ.結核の闘病中に洗礼を受けた後,創作に専念する.

■大学時代に落ち込んでいた時に,同研究室の一人から「元気になるから読んでみぃ」と薦められた作品.読んだ後,さらに落ち込んだ覚えがある男性のお薦め本(らしい)です.
その後気がついたんですが,理系男子で,「氷点」やこの本を手にしている人が結構多いんだけど,
もしかしてあなたも三浦族・・・?
「じゃぼん玉」 :乃南アサ
東京生まれ.早稲田大学社会学部中退.広告代理店の勤務を経て作家へ.

■「凍える牙」はドラマ化が何度かされるほど有名.だけど,この作品の方が好き.
「しゃぼん玉」は,強盗やひったくりを繰り返しながら転々としていた青年がひょんな事から助けたおばぁちゃんとの出会いで人生が一変するというお話.ラストは,泣けた〜.”厳しいけど,優しい.そんな人の温かさっていいな”って,朝までベッドの中で泣かせてくれました.
「ななつのこ」 :加納朋子
福岡県生まれ.文教大学女子短期大学部文芸科卒業.夫は貫井徳郎氏.

■鮎川哲也賞受賞作品.柔らかい文章力がすごい.ミステリーというよりも,日常の謎をうまく解き明かす作風が彼女の特徴.「ななつのこ」は短大生の駒子が「ななつのこ」という本の作者にあてたファンレターからはじまるやりとりの物語.実際に,敬愛する北村薫氏に送るために書かれた作品らしいです.
私はカフェで読破しました.ほんわかした気持ちになれます.
「恋」 :小池真理子
東京生まれ.成蹊大学文学部英米文学科卒業.出版社に就職するが,1年で退社.作家活動へ.

■直木賞受賞作品.「恋」は,軽井沢が舞台.若い女性が,年上の淫蕩な生活の虜になり,やがて破局が…という異質の世界を独特のタッチで描かれた作品.小池氏は,失業中に自分の企画を数出版社にガンガン持ち込むというアクティブな女性.「知的悪女のすすめ」を読んだ父親は,ショックで寝込んだという一説がある.そんな彼女らしい味がしみこんでいる一品です.
「対岸の彼女」 :角田光代
神奈川県生まれ.早稲田大学第一文学部文芸専修課卒業.

■直木賞受賞作品.「30代,既婚,子持ち」の女性と「独身,子なし」の性格も生活も違う現代女性の二人が友情を交えながら,心の闇をリアルに描いている作品.
「人間の距離感」にスポットをあてた女性向けの小説です.
「博士の愛した数式」 :小川洋子
岡山県生まれ.早稲田大学第一文学部文芸科卒業.川崎医大秘書室に就職,川鉄のエンジニアと結婚.

■読売文学賞,本屋大賞受賞作品.記憶が80分しかもたない数学博士と家政婦の母子との交流を描いた小説.博士が主人公の息子につけた「ルート」というあだなは,彼の頭のてっぺんが平なのと,
どんな数字も引き受けうるという優しさがある意味で「ルート」.なんかジーンときた
「火車」 :宮部みゆき
東京生まれ.高卒後,裁判所速記官試験に不合格,本気で速記を学ぶ.法律事務所に勤務しつつ執筆.

■山本周五郎賞受賞作品.あなたはもう,その列車に乗ってしまっている.少しずつ深まっていく闇へすすむ列車に.「ただ幸せになりたかっただけ」という主人公の最後の一言は,カード地獄で苦しむ現代の女性に警鐘をならしているかのように思えました.宮部氏は,ものすごい勢いで小説を書きまくっているという
ギガ・バイタリティのある女性らしいです.
「白い巨塔」 :山崎豊子
大阪生まれ.京都女子大学国文科卒.毎日新聞社に入社,井上靖の元で記者訓練を受ける.

■大阪大学医学部をモデルにした大学病院の腐敗を描いた鋭い視点の社会派小説.
大阪の風俗が作品への味付けとなっている.もうなんども読んだ.ドラマもよかった.
非人間性,社会問題をガツンと指摘した作品が多い中,「大地の子」で酷似告訴される.本人はこれで引退を考えたが,芸術家に引退はないと言われ,現在も執筆活動をつづけている.がんばってほしい.




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